農具や厨房機器が必要になったら、選び方はどうする?
これから農業を始めようと考えている方や実際に始めたばかりの方の中には、農機や農具・厨房機器など、業務用機器の種類や入手方法に不安を覚えたり、実際に間違えたりして困っている人は意外にも多いと思います。そこで初心者向けの基礎知識から業界の常識までを分かりやすく解説したいと思います。
起業ブームで人気!でも“農機と厨房”の問題解決は?
ひとくちに業務用機器といっても、建設土木から建築、自動車産業用、機械組み立て、ロボット、農機・農具、厨房、福祉・教育、スポーツ、遊戯・遊興関連など、数えだしたらキリがなくあがってくるほどのジャンルがあります。そのなかで、とくにこのサイトで取り上げたいのは、「農機・農具」、「厨房機器・厨房器具」の2つのジャンル。
この2つのジャンルには共通点があります。1つは食つながりであること。もう1つは、それまで素人だった個人が意外と気軽に手を伸ばせる距離にあるということ。「農機・農具」は、耕作放棄地の問題もあって、最近ではそれまで無縁だった人が、農業研修や就農セミナーを受講して、個人で農地を借り受けるケースが増えてきました。
「厨房機器・厨房器具」は、個人でレストランを開業し、異業種からの新規参入でチェーン店の開業・進出が相次ぐなど、業界別にみるともっとも新陳代謝が活発なジャンルでもあります。農機にも厨房にも注目が集まっている一方で、それぞれが抱える問題解決の窓口というと、ありそうでありません。
そこで少しでもお役に立てるようにと立ち上げたのがこのサイトです。初心者の方でもわかりやすいように、基礎的なところからテーマを組み立てています。行動を起こすときの参考にしていただければと思います。
【基礎知識】農機・農具の買取・購入は、中古品でも平気?
業務用機器の種類や入手方法をめぐって、希望者を悩ませているのが、新品のほうがいいか、中古でも大丈夫かという問題です。悩んで結論が出ないようなら、レンタルという手もあるという人もいます。実際に農業の分野に初めて携わる人は、農機や農具の機能を実感するのも理解するのも始めてからとなります。
現場に農機や農具が持ち込まれて、数ヶ月も経たないうちに故障されてしまっては、事実上の立ち往生ということになります。新品ならメーカー保証やサポートが付いているので安心、けれども相当高額な買物になってしまうのでまとまった資金が必要になります。
そこでまず、新品の農機具のメリット・デメリットを洗い出して、そこから見えてくるものは何か、それを1つの足がかりとしてみましょう。もしも農具買取は新品にしても中古にしても現実的ではないという結論が出たら、リースやレンタルで借りてスタートするという手段も見えてきます。
農機・農具の新品購入のメリットは?
- 何と言ってもメーカー保証が付いている。保証期間中は気兼ねなくトラブル対応してもらえる。呼んだらすぐに駆けつけてくれる。
- サポートサービスも充実しているはずなので、不明点があれば何でも聞ける。担当者の多くは農業のプロ知識をもっているので心強い。
- 新品なので、機能も性能も最先端。何を作動させてもスムーズで、効率よく作業がすすむはず。始動不良や動作不良のリスクはまずない。
- 新品を購入することで支払いの精神的な負荷はかかるけれど、それだけ意欲が高まってやる気が出る。後にはひけない覚悟もできる。
- 他の農機や農具と一式で購入を決めれば、値引き交渉の余地が1割~2割はあると考えられる。
- 後年になって中古市場に出したときでも、1次使用品になるので高値で売却できるはず。後継者ができてもそのまま譲渡できる。
農機・農具の新品購入のデメリットは?
- 購入価格が高いので、すべてをキャッシュで揃えるのは不可能に近い。銀行融資などで借金生活になる。
- もしも短期間で挫折してしまったら多額の借金が残る。新品は3カ月以内で新古品、半年で中古扱~。中古になると購入金額の10分の1とも。
- 新品といっても、畑で作動させればその瞬間から泥まみれ。見た目だけで言えば、中古品と何も変わらず、損をした気にもなる。
- エンジン系統のスペックは、新作モデルチェンジしても大差がない。それならば数年前の型落ちの新古品のほうがいいのではと悩む。
- コンピュータシステムや液晶表示が当たり前になるのは便利だけれど、その他の余計な機能が付加されたせいで、自己メンテができなくなっている。
【基礎知識】業務用機器の種類にはこんなものがある
業務用機器のうちで厨房機器については、「作業台」、「冷凍冷蔵庫」、「製氷機」、「業務用シンク」が大きなところで、これに「換気扇・空気清浄機」などを加えて、5つのカテゴリーで考えればほぼ標準的な厨房設備は揃うことになります。あとはこの5つに、調理用器具と食器・食器棚が個々の店舗の営業内容によってプラスされます。
作業台はさびにくく手入れも楽なステンレス製が一般的で、新品であれば2万円程度、中古厨房機器で揃えるのであれば5000円程度でもいいものがあります。また出前を自店で行なう場合は、これらの作業台とは別に、出前用の作業台が必要になります。思った以上にスペースをとるので、設計段階からの考慮が必須です。
主な厨房機器・設備・器具類
- 作業台
- 冷凍冷蔵庫
- 製氷機
- 業務用シンク
- 換気扇・空気清浄機
- 調理器具類各種(和洋中・総合)
- 食器・食器棚・食洗機
予算をかけたい、ハイエンドな冷凍冷蔵庫について
厨房の中では食材の鮮度を保つ意味もあって、中心的な役割を果たすものです。業務用は庫外の熱気を遮断するだけの厚さと機能を備えていますので、冷凍冷蔵庫についてはグレードの高いものを準備しましょう。
希に家庭用でやり過ごしている厨房もありますが、故障が多くプロ用としては不向きです。プロ用のもので、台下冷蔵庫、コールドテーブルなどと組み合わせて、縦型、ストッカー、ショーケースを考慮します。
能力を適合させたい業務用製氷機の選択について
業務用の製氷能力とは、1日につくることができる氷の量のことです。必要以上の能力があると水道光熱費や設置スペースの無駄になりますし、過少な製氷機を選択してしまうと店の出し物に間に合わなくなります。
平均的な能力の算出式としては、『店の客席数×1.5倍』とされています。客席数20席の店舗であれば20席☓1.5倍で、1日あたり30kgの製氷能力があれば賄える大きさになります。省エネ・省スペースの製氷機を選びましょう。
また氷には、下記のような3種類があります。どのタイプの氷がもっとも多く使われるかをシミュレーションして、製氷機の種類と設置場所を考えておきましょう。
- キューブタイプ=主にドリンク類に使われる製氷機で、フリードリンクの場合は、客席ホールのコーナーに設置。やや多めの製氷量を見込む。
- チップタイプ=ドリンク類をはじめ、料理やデザート類のアイスベッドに使用。厨房内・バックヤードに設置する例が多い。
- フレークタイプ=料理や素材の鮮度を保つためのアイスベッドとして使われるもので、粒状の氷のこと。設置場所は厨房内が大半。
保健所の認可が絶対優先の業務用シンクについて
シンクには1槽式から2槽式・3槽式までがあり、水切りシンクを加えた4種類がありますが、作業の効率性などから平準的な2槽式が厨房シンクのボリュームゾーンになっています。シンクは所管する保健所の許認可が必要ですので、厨房機器を発注・搬入してしまう前に書類を揃え、保健所に出向いて認可を受けてください。
最終的には立ち入り検査があります。チェックポイントには、2槽以上のシンク数とその設置場所、シンクの深さなどです。保健所の立ち入り検査と認可が搬入後になってしまうと、規定外となったときにシンクや設備品の買い直しとなり、開業が遅れることになります。
最近増えはじめた需要。換気扇・空気清浄機について
これまでの厨房設計には調理台、ガスコンロの上部に取り付ける換気扇穴しかありませんでしたが、最近では衛生法の強化・取締り回数の増加などから、厨房内に複数箇所の設置をするパターンが増えました。ウイルス除去・防カビ機能付の空気清浄機が人気です。
安易な業務用機器の入手方法は選ばないほうがいい
たとえば厨房機器でも農具や農機でも、新品で特定のメーカーから購入すればメーカーの保証期間があって1年程度は安心していられます。何かあれば気兼ねなく担当者を呼んでメンテナンスや応急処置を施してもらうこともできます。ところが新品のものは高くつくという理由で、最初から中古を選んでしまう人も。
中古の場合、初期コストは安くつくように思っても、保証期間の設定もなければメーカーからの出張指導のようなものも受けられません。そのうえ中古は、使ってみなければ機械や器具のコンディションがわからないので、開店早々に不具合が起きてしまって大混乱などということも珍しくありません。
出店するのは初めて、経営に携わるのは初めてという人は、現場のトラブル対応そのものにも慣れていないので手がつけられなくなります。仮に新品を購入することでコストが倍近くになったとしても、ビギナーレベルでスタートを切るときは、新品を購入してメーカーの指導のもとに運営を開始したほうが無難です。
中古厨房機器や中古農機具で考えられること
- 保証期間やメーカーの指導が受けられないので、まともに機械が動くか継続稼動してくれるかは運試しのような状況になる。
- とくに中古厨房機器の場合、初心者のケースでは、店の運営・やりくり、現場スタッフの指導と機械のトラブルが重なれば大混乱に陥る。
- 中古農機具の場合は、繁忙期に器具のトラブルに見舞われてしまうと代替え機械の手当てもできないので、農作業そのものがストップすることも。
少なくても事前に上記のようなことは考えられるので、どうしても中古で揃えたい場合は、保証やメンテナンスサービスの付いた販売代理店を探すしかありません。
また価格優先であちらこちらの販売店からバラバラに購入すると、イザというときの手配がたいへんになります。できる限り1つの代理店から仕入れて、購入時に保証やメンテナンスの確約は取り付けておきましょう。
中古の業務用機器購入は、“妥協の産物”になりやすい
中古というのは初期コストを抑えるという意味では、これ以上ない入手方法であり、マーケットも充実しています。最近では中古販売店に出向いていって購入するのではなく、インターネットで注文するという事例も増えています。ネットで申込んで手軽に購入できるため、海外からの取り寄せも可能になりました。
このようなケースでもっとも多くあるトラブルは、“注文した厨房機器のサイズが店舗厨房の大きさにあわない、入りきらない”といった事例です。そもそも価格優先・コストカットでやってきた中古の選択ですから、性能や機能・品質、劣化の度合いなどはすべて妥協し、後回しになっています。
しかしどうあっても厨房機器のサイズだけは、譲ってはいけない重要課題なのです。農業用機器や農具は相手にするのが農場・畑なのでそのようなサイズ問題が起きるとすれば、畑の大きさ・広さに適合しているかどうか、収納庫・収納場所に収まりきれるかどうか、その程度のものです。
厨房に収まりきらない機器はシャレにもなりません。厨房は中で作業をするスタッフの動きやすさ・動線の確保を第一とすべき場所です。サイズがあわずにはみ出した厨房機器は結果的にスタッフの動線を寸断して作業効率を悪化させ、事故やトラブルにつながる恐れがあります。
平面図を利用して厨房機器個々のレイアウトを事前に確認し、妥協のない機器を取り揃えましょう。パソコンを使えばレイアウトも自由に動かせるので複数案が作成できます。とくにシンクの周辺、背後などの空間取りはしっかり行なって、スタッフが背後を行き来しても大丈夫なスペースを確保するのが原則です。
中古にするか新品にするか、業務用機器のリストの作成
機能が損なわれたり、劣化して耐久性が怪しくなったりしても、調理や店の運営に大きな支障が出ないものは、新品を揃える必要はありません。大型でスペースにはめ込んでしまう冷凍冷蔵庫などは新品のハイエンドな製品とし、それ以外の“単純な機能で、簡単に買換え・代替えがきくもの”は、積極的に中古品を購入するのがベストです。
リストを作って新品と中古の区分けを行なっておくと、効率よく安全なコストカットが行なえます。また新品・中古にかかわらず、メーカーや型式の違いで特徴・機能も違ってきます。リストを作成する際は、同時に製品名も書き込み、新品・中古の区分けを行なっていきましょう。
中古でも店の運営には支障が出にくいもの
- タオルウォーマー
- レジスター
- スタッフのタイムカード機器
- スライサー
- ミキサー
- コンロ
- 炊飯器・炊飯ジャー
- フライヤー
オーブンや製麺機、ピザ釜などは単機能とはいえ店舗メニューの中心となるもので、使用頻度が高く、故障や修理の心配からは遠のけたいものです。自身の店にとって、どれが中古でも大丈夫なものなのかを判別していきましょう。フライヤーやピザ釜などはIH製品も出ているので参考にしてください。